少年の時間はすでに終焉となりたる

須藤克三のイラスト
山歩きは続く。

山形の春といえば山菜取りが恒例のイベントである。
誰も彼もがビニルで編んだカゴを担いだ山菜ルックで山に入り、自然が生んだ宝物「山菜」を探すトレジャーハンターに変身する。
そんな宝探しの人々とすれ違うかと予想していたのだが、時期が過ぎていたのか誰ともすれ違わなかった。

黙々と山を歩いて、時折「ほう芽が吹いているな」などと感動するふりをしてみるのだけれど、実際は全然感動していなくて、目標は早く頂上を目指すのみである。

少年の時間はすでに終焉と
なりたる山の夕ぐれの風
By須藤克三(南陽市宮内町)

高校3年の秋。
卒業後はJAZZ一筋トランペットで生きよう願っていた克三は、この夏念願のJAZZバンド(地方のキャバレーのドサ周りバンドだが)への就職も決まった。
しかし夏の終わり、大黒柱の父が死んだ…。畑の帰り道の突然の出来事だった。

シンコペーションを効かせてオータムリーヴスを吹き終わった後、克三を夕日が暖かく照らす。嫌でも目に入る山々の夕焼けにはいつも閉塞感さえ感じていたが、この日はなぜか素直に美しいと思った。

残された母や弟、そして牛のモヒジを生かせるために、この地で生きてゆかなければならないのだろう。そして一生ここから抜け出すことはないのだろう。

そう決心した克三の頬を一筋の風が吹いた。
冬の香りがした。

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